今日、雨宿りを兼ねて書店に立ち寄ったところで
一冊の文庫本が、大きく平積みされているのが
目に入りました。

タイトルは
でっちあげ
福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫)

『でっちあげ』新潮文庫 書影

著者は、ジャーナリストの福田ますみ氏。

「新刊なのかな?」と思って手に取って、
パラパラとめくり読んで、内容が非常に
気になったので、そのままレジへ。

で、読み始めてみたら、2007年に単行本化された
ノンフィクションに、その後の裁判の決着までを
追記して、2009年に文庫化された本でした。

ただし、私が手にいたのは今年9月の増刷分。
(平成30年9月5日 18刷)

さらに改訂が加えられて、「あとがき」のさらに
後ろに「追記――(以下、見出し省略)」として
2013年1月27日に、言い渡された事件の判決内容
までが、しっかりと追加されています。

10年に渡る「でっちあげ」との闘いの記録です。

今、この本をお勧めして、書店の入り口に
大々的に平積みした書店員の想いはいかに……。

ただ、何となく、この本を強く推薦したかった
気持ちが分かるような気もします。

最近ね、いろんな不祥事が報道されるじゃないですか。

特にスポーツ界。

どこまで本当なのか、さっぱり分からない件が
多いんですが、少なくとも、
週刊誌やワイドショーの大騒ぎを鵜呑みにすると、
後で自分も損をするんだろうな、という気がします。

“決めつけ” からの、浅い取材 = 短期取材と
(言わせたいことだけ言わせようとする)誘導質問を
何社も何社もかぶせていくインタビューでは、
“本当のこと” なんてきっと分からないでしょうから。

だから、ちょっとマスコミに対して
冷静に距離をおいてみませんか? 
と。

そんな、気持ちが、あの棚づくりに込められていたのでは
ないでしょうか、としばし妄想してました。

事件の概要と経緯の一部

この本に書かれているのは、2003年の事件。
本書の「序章」から事柄を引用し、事件の概要と、
その経緯の一部を紹介させていただきいます。

はじまりは、朝日新聞2003年6月27日 西部本社版に
載った
「小4の母『曾祖父は米国人』 教諭、直後からいじめ」
という大見出しの記事。

このローカルニュースを全国規模に押し上げたのが、
「週刊文春」2003年10月9日号の
「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した
史上最悪の『殺人教師』」
という見出しの記事。

教師の実名入り報道です。

この刺激的な記事に、ワイドショーが飛びつき、
大騒ぎになったという話です。

私は、あまり記憶にないのですが、

「血の穢れている人間は生きている価値がない。早く死ね、自分で死ね」と脅したため、男児は自宅マンションから投身自殺を図ったことさえあったという。
 
 『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫)14ページより

教師が、小学生にこんな感じで自殺を示唆した
というニュースを耳にして、愕然としたような
薄い記憶はあります。

だって、こんなことあるのかって思いますよね。

福岡市も、
当の学校の校長・教頭も、
福岡県弁護士会「子どもの権利委員会」も、
朝日新聞も、
週刊文春も、
各局ワイドショーも、
そのほか大新聞も、

みんな揃って、「殺人教師」を糾弾したこの事件。

問題の教師本人に話を聞いた者もいれば、
被害者親子の話を聞いた者も、
周辺の人々に話を聞いた者もいます。

とにかく、どんな証言にしても一方的に信用して、
実質的に誘導尋問と変わらないインタビューを
いくら行っても、真実には到達できないことが、
その悲惨な実例が、福田氏の丁寧な取材によって
はっきりと記されています。

こういう話を読むと、改めて「ヒアリング力」
=「聞く力」が重要
であると想いを新たにします。

報道発生から時は流れて、2013年。

決着は、いかにして着いたのか。

あるいは、着かなかったのか。

曖昧にされたことは何だったのか…。

おススメです。

 

今日も、新しい気づきに感謝です。