パラリンピック関連で、ちょっとした問題が
あったようですね。
私はこのポスターに関する当事者でも何でも
ありませんが、何というか、非常に感じたこ
とがあるんですよね。

だって、「パラスポーツ選手の良い話」を
真ん中において、罵り合うようなSNS投稿が
続いているのって、ホントにイヤじゃないで
すか。

ちなみにどんな問題があったかというと
↓下記の展示撤去のお話。

「BEYOND FES 丸の内」における展示の撤去について

東京都のパラスポーツを応援する人を増やすプロジェクト「TEAM BEYOND」の一環として開催中のイベント「BEYOND FES 丸の内」の掲示物につきまして、一部、東京都のデザイン及び掲示方法に不適切な部分があり、複数の方から御指摘をいただきました。
東京都では、頂戴したお声を重く受け止め、東京駅構内の当該ポスターを撤去し、「TEAM BEYOND」ウェブサイト内の当該ポスター画像を削除いたしました。
御不快な思いをされた方々に心よりお詫び申し上げます。
また、御指摘をくださった方には御礼申し上げます。

 TEAM BETYOND 公式サイトより引用

 「BEYOND FES 丸の内」における展示の撤去について

まず、ポスターに関して言うと下記の2点が
問題だったのかな、と。

  1. キャッチコピー/デザイン
  2. 東京都側の説明努力不足

そして、問題の根本は、下記の2点にある
のだろうな、と。

  1. パラスポーツの認知不足
  2. (健常者による)障害者への偏見

パラスポーツ選手のカッコいい言葉に、なぜクレームが?

まずは、ポスターのコピーとデザインについて。

↓ 下に載せたNHK NEWS WEBの画面に
掲載されている展示画像を見ると、正直
「なぜ、これでクレームが?」と思ったりも
します。

NHK News webの画面キャプチャ

パッと見て、
「あー、パラスポーツ選手のかっこいいコメ
ントを、かっこいい写真と共に並べているん
だな」と。

いっぱいありますからね。

そして、ニュース記事本文を読むと、
「インターネットや電話を通じて~意見が
相次いだ」とあります。

このうち、パラバドミントンの杉野明子選手のポスターには「障がいは言い訳にすぎない。負けたら、自分が弱いだけ」と記されていましたが、インターネットや電話を通じて「障害者への配慮が欠けている」などという意見が相次いだということです。

 NHK NEWS WEB「パラ選手のポスターに「配慮欠く」と批判 都が撤去」2018年10月16日 18時01分配信より

どのくらい苦情が来たのか、
どんな人から、どんな苦情が来たのか、
どうもよく分からない。
 
なので、私が最初に抱いた感想は、
「あー、また言葉狩りみたいなことが起き
たのかな」というものでした。

不寛容な社会だな、と。

実際、パラスポーツの選手の方からも
この「撤去」に至る経緯を、非常に
残念がっている声が上がっていました。

スポーツ選手の言葉としてカッコいいで
すからね。

要するに
「勝つも負けるも、自分次第」って
言っているだけなんですから。

そしてまた、パラスポーツ選手ってすごいん
ですよね。
運動能力が、半端ない。
鍛え方も、半端ない。
当り前ですが、アスリートですから。

一般人とは違いますから。

世界で覇を競うのは、
オリンピックもパラリンピックも、
変わらないんですから。

そういう選手の言葉として
非常にカッコいいな、と思います。

テキストは、必ず誤読されるもの。その前提で配慮すべき

でも、↓J-CSATの方の記事に掲載された
画像を見ると、話が変わります。

J-CAST画面キャプチャ

「障がいは言い訳にすぎない。
負けたら、自分が弱いだけ」

というキャッチが、杉野選手のコメントで
あるとは、パッと見て分からない……。

いや、よくよく見ても、伝わらない可能性
が、結構高いです。

実際、Twitterに上がっている抗議の投稿
では、これを「東京都側が勝手に作文した
キャッチコピー」だと勘違いしているよう
な投稿もありました。

カギカッコ(「」)でもつけたら、
“本人のコメントなのか” と伝わりそうで
すが、見た目のかっこよさを優先して、
このデザインになっているのでしょう。

写真についても、杉野選手を健常者だと
勘違いしても不思議ありません。

よく見ると、小さく障害の名称が書かれ
ていますし、目を凝らして右下を読めば、
パラスポーツに関するポスターであること
が分かります。

でも、こういう広告を、そこまでしげしげ
と見つめる人も、なかなかいないものです。

じーっと見てるのは、業界人か、モデルに
なっている芸能人などのファンぐらい。

こうしてみると、確かに
誤解から、怒られてしまっても、
仕方ないな
、と。

全体的に、
「誰の目に、どう映るか?」の配慮が
足りなかったことは否めません。

で、キャッチの話。

元ネタは、下記のスポーツナビの記事
だそうです。

「それまで健常の大会に出ているときは、障がいがあってもできるんだという気持ちもあれば、負けたら“障がいがあるから仕方ない”と言い訳している自分がありました。でもパラバドでは言い訳ができないんです。シンプルに勝ち負け。負けたら自分が弱いだけ」

スポーツナビ「言い訳にした障がい」から東京の主役へ 杉野明子を変えたパラバドとの出会い(久下真以子 2018年3月7日(水) 11:20)

すごくいいお話!

難産が原因で、左腕に障害を負った
杉野選手は、そもそも健常者と一緒に
バトミントンをされていたんですねぇ。

そうした人生だから、上記のコメントが
出てくるわけです。

こうした背景情報を全部抜いて

「障がいは言い訳にすぎない。
負けたら、自分が弱いだけ」

とだけ、書いてしまったことが今回の
失敗要因だと思います。

だってみんな、杉野選手のこと、
知らないですよね?

私も、申し訳ないですがパラスポーツに
詳しくないので、存じませんでした。

そもそも私は、セ・パ両リーグの現役選
手も、Jリーグの選手も、Bリーグの選手
も、数えるほどしか存じません。

でも、同じような方は、世の中に
ごまんといらっしゃいますよね?

そういう世間に向けて、
まだまだ認知度の低いパラスポーツを
訴求するための展示なんですから、
キャッチ―であること以上に大切に
するべきこともあったんじゃないかな
とは、思いました。

キャッチーにしよう、
インパクトを強めよう、という制作側の
気持ちは分かります。

が、今はパラスポーツ選手にとっても
大事な時。

目先の「インパクト」より、
もうちょっと長い目での広告効果を
狙った方が良かったのでは、と。

ほかにもいっぱいパラスポーツ選手が
掲示されているので、パッと見の
インパクトはすでにクリアしている、
という気もしたんですよね。

そして、
東京都の説明努力不足
についてですが、
「クレームに対して、もうちょっと毅然と
対応してもいいのでは?」という気持ちも
ありますが、当の杉野選手のことを考えれ
ば、東京都がガヤガヤと戦う話でもないの
だろうな、と、そこは納得なのですが…

そもそも、この展示広告を作る際に
TEAM BEYOND ならびに
TEAM BEYONDとは何か? ということを
もっと強く押し出したデザインにした方が
メッセージのまとまりも出しやすくて
良かったんじゃないのかな、と
通りすがりの人間として、ちょっと
感じた次第です。

結局、日本には障害者への偏見が根強いってこと?

J-CASTの取材に答えた
「障害者雇用の働き方」さんは、下記のよう
に話しておられます。

障害を言い訳にするな、というのは、典型的な障害者差別の言い方です。

 J-CAST 「もう何もできなくなってしまうほど、ひどい言葉」「障がいは言い訳にすぎない」ポスターは何が問題だったか(2018/10/16 20:40)より抜粋引用

察するに、いろんな場面で、これに類する
無理解な言葉、差別的扱いに直面されて
きたか、あるいは、そうした状況に苦し
んだ方をご存じであったりするのでしょう。

つまり、
 こんな言葉を、理不尽な文脈の中で
 使われている現実がある

と推察されます。

それは、杉野選手の、スポーツ選手とし
ての、勝負に対する自分の覚悟を固める
言葉とは、まるで意味が違います。

何というか、日本にはまだまだ、いろんな問
題があるんだなと素直に納得しました。

ただ、「言葉」だけを見ると、
これは、用いる時の文脈が大事ですね。

正当な努力を促す状況であれば、愛のムチ
にもなります。

例えば私が、10kmマラソンに参加したと
して、早々にリタイアした時なんかに、

「いやぁ、だって、太ってますから」
って言ったら、
「肥満を言い訳にするな!」
ってなりますよね?

これは、正しい使用例です。

でも、太っている私にSSサイズのTシャ
ツを買ってきて、

「着れません!」

「肥満を言い訳にするな!着ろ!」

というのは、理不尽ですよね。
悪い使用例です。

……ま、ちょっと話が逸れましたが、
何でこんなエントリーを書いたかという
と、何だかあのポスターが
「いい!」
という陣営も、
「駄目だ!」
という陣営も、
どちらも、一方的に攻撃する言葉が
目立つなと思ったからです。

SNSだと、どうしてもそうなりがち
なんですけどね。

TEAM BEYONDには、善意しか感じない
ですし、差別を助長する狙いなんて、
まるでないのに、twitterなどでは
えらい剣幕で罵られたり……。

その逆も、あるのかもしれません。

でも、こんな「杉野選手のいい話」を
真ん中において、罵りばかりが目立つ
状況って、イヤじゃないですか。

そんな思いから、おもわず長文になって
しまいました。

最後までお読みいただき、
ありがとうございます。

追伸

「障がい」という表記に対す
る批判もあったようです。
しかし、これは「害」という漢字が
文字通りに、悪いイメージがあるから
配慮した表記なんですよね。

障害者
障碍者
障がい者

私が実際に携わった仕事の中でも
表記が、何度か変わりました。
変えるように言われました。

似たような話で
「子供」は、あまり良くなくて、
「子ども」の方がいい
ということもあります。
NHKの表記も「子ども」ですね。

日本語って、結構曖昧模糊な面が
あるんです。

定義が固まらないまま、忖度して
表現が変わることがあるんです。
仕事上、結構気を遣うところでも
あります。

今日も新しい気づきに感謝です。

J-CASTの画面キャプチャ