不倫報道の「文春砲」に大騒ぎする“潔癖”日本と対極にある、“エグくて寛容な”フランスの人間模様
この映画、宣伝から想像していたもの――サスペンス――とは全く違って、その人間模様――個人主義の徹底と寛容さ――に、ただただ「すごいなぁ…」とため息をつくばかり。
これがフランスなのか……
というと、当のフランス人から「待った!」が
かかるかもしれませんけどねw
それだけ、強烈な登場人物が揃っています。
日本の宣伝コピーは下記の通り(↓)ですが
犯人よりも危険なのは“彼女”だった――。
なんか、違いますね。
サスペンスとして売りたかったのでしょうけど。
というか、劇中の展開をミスリードすることを
狙ったコピーなのではないかと…。
そもそも「レイプ被害」さえ主軸にならない、深すぎる泥沼劇
この映画の原作は『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の
原作者でもあるフィリップ・ディジャンの『Oh…』。
原作を読んでいないので、エロ・グロをお家芸とする
変態監督ポール・ヴァーホーヴェン(バーホーベン)の
手でどこまで変えられているのか分かりませんが、
映画『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』に夢中に
なった女性たちが、この『エル ELLE』を観てどう思うのか……。
少なくとも「憧れの恋愛」要素は皆無かと。
何しろ、登場人物ほぼ全員が「人生傷だらけ」。
何を書いてもネタバレになるので、あまり書けませんが
主人公ミシェルの息子が同棲する彼女の出産後のシーンは
まさに「開いた口が塞がらない」ほどの衝撃&笑劇!!
ミシェルの交友関係もドロドロ!!!
男たち全員が、まーヒドイ!!!!!
それでも、物語は毅然と進んでいきます。
何より、「とんでもなく不幸な過去」を背負っている
ミシェルが、レイプにもめげずに毅然と
人生の舞台に立ち続ける姿に惹かれます。
公式サイトに掲載されている著名人コメントの中でも
特に↓の内田春菊さんのコメントに納得。
「か弱いふり」「できないふり」しないで生きるってなんて素敵なんでしょう。
スカッとします、この映画。内田春菊(漫画家・作家)
『エル ELLE』公式サイトより
ついでに言うと、ミシェルの「不幸過ぎる過去」の
真相なんてのも、この映画では明かされません!!
P・ヴァーホーヴェン監督からすれば、
「そんなことどーでもいい」んでしょうねw
ちなみに言うと、私はP・ヴァーホーヴェン監督が
大の苦手w
特に『ショーガール』は、私が観てきた映画史上
堂々のワースト1 にランクしています。
…ですが、この『エル ELLE』はすごかったです。
ハリウッドでは、こんな映画は
撮らせてくれないでしょうねw
おススメです。
【作品メモ】2016年・フランス、べルギー、ドイツ制作。
第89回アカデミー賞 主演女優賞ノミネート、第42回セザール賞 作品賞/主演女優賞 受賞、第74回 ゴールデン・グローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)/外国語映画賞 受賞ほか、世界の映画祭で計133ノミネート、69受賞を達成。監督は、『ロボコップ』『トータル・リコール』『氷の微笑』『ショーガール』『スターシップ・トゥルーパーズ』『インビジブル』など、変態的なエロ描写とグロテスク趣味でお馴染みのポール・ヴァーホーヴェン。
【監督】ポール・ヴァーホーヴェン(またはポール・バーホーベン)
【原作】フィリップ・ディジャン(早川書房の表記は「フィリップ・ジャン」)
【脚本】デヴィッド・バーク
【キャスト】ミシェル・ルブラン/イザベル・ユペール:イレーヌ・ルブラン/ジュディット・マール:アンナ/アンヌ・コンシニ:ロベール/クリスチャン・ベルケル:リシャール/シャルル・ベルリング:ヴァンサン/ジョナ・ブロケ:パトリック/ロラン・ラフィット ほか
■ Blu-ray発売元:ギャガ
本編:131分