今日紹介するのは、
「私の人生でもっとも愛した作品ベスト10」
の1本として、すでに確定している大傑作
ポール・ニューマン主演の
『暴力脱獄』(1967年)です。
一旦書き始めたら、どこまで書いて、
どこで終わらせていいか考えるのが大変で
紹介が遅れましたが、もう書きます。
サクサクサクッと書いちゃいます。
とにかく、邦題が意味不明なので、
未見の方には印象悪いですよね。
でも原題は、とてもカッコいい。
『Cool hand luke』。
cool hand を「英辞郎」で調べると
【名】
〈米俗〉冷静な人
と出てきますが、
そんな小さな話じゃないんです。
『傷だらけの栄光』(1956年)
『長く熱い夜』(1958年)
カンヌ国際映画祭 男優賞 受賞
『ハスラー』(1961年)
英国アカデミー賞 主演男優賞 受賞
『ハッド』(1963年)
『動く標的』(1966年)
『引き裂かれたカーテン』(1966年)
と、作品は次々にヒットして、
ゴールデングローブ賞の
「世界で最も好かれた男優」に3度も
選出(1963年、1965年、1967年)されるなど、
ノリにノっていた大スター、
ポール・ニューマンが演じる
“クール・ハンド” ルークは、
神を信じず、人に従わず、己を貫く男。
自分の可能性を試し、諦めない男。
その意志の強さ、タフな男の生き様に
本気で惚れてしまう、憧れてしまうのが、
この映画なのです。
映画史の中でも、特筆すべき反逆児
ルークたちが収監されている刑務所に
人権意識はありません。
刑務所には、厳しいルールがあり、
誰も逆らいません。
そして、受刑者の中にも序列があります。
ジョージ・ケネディ演じる巨漢・ドラッグが、
受刑者たちのボス。
彼を中心とするグループに逆らうと
肩身の狭い思いをすることになります。
ルークはしかし、刑務所のルールに
従う気もなければ、ドラッグ達のグループに
気を遣うこともしません。
あくまでも、ルークはルーク。
この、誰を相手にしてもひるまない
強さに憧れます。
皮肉な表情で口角を上げて、
静かにほほ笑む、その表情の魅力あること!
ドラッグに挑まれたボクシング勝負で
いくら殴られても、何度倒れても屈せず、
立ち上がり、パンチを返すルーク。
そして、ポーカーでブラフをかけるルーク。
彼の一番のシンパとなったドラッグが、
「奴に食べられないものはない」とホラを
吹くのに合わせて、
「ゆで卵を50個は食べられる」と自分に
負荷をかけて、勝負を楽しむルーク。
そして、最愛の母の死を知り、脱獄を
考えるルーク。
常に挑み続けるルークに魅了されない人は
いないのではないでしょうか。
とにかくポール・ニューマンが格好よくて、
美しくて、タフで、可愛らしくて、魅力的
なんです。
アメリカ映画史でも特殊な、“神への反骨”
この映画は、単にアウトローを描いた
作品ではありません。
ストーリーは非常にシンプルですが、
内包するテーマは、実はとても深淵です。
非常に保守的なキリスト教信者が多いと言う
アメリカで、ルークは神の存在を否定する
言動を繰り返しています。
雷雨に打たれたルークは、天に毒づき、
ドラッグに咎められます。その様子を
看守たちは冷たく見つめ、
「神を信じないもの」として見下します。
さらに、非常に愉快なシーンから一転して
騒動から覚めて、静かになった食堂の
テーブルに横たわるルークの姿が示すもの…。
受刑者たちが、過酷や野外労働を行っていた
道路が引きで映し出される、
ラストシーンが示すもの…。
キリスト教に縁のない人には分かりづらい
かも知れませんが、非常に意味深長です。
この映画が浮き彫りにしているのは、
存在が不確かな「神」にすがり、従順に
過ごすのではなく、
「自分自身」の存在を “実” として、
モノゴトの本質を追求して生きる姿です。
ルークは、宗教という規範に頼るのではなく
誰かが勝手に作り出した社会のルールに
盲従することもなく、
自分を忘れず、
反骨心を忘れず、
愛する人や友人を忘れずに、
優しく、タフに生き抜いていくべき
現代人の見本のような男でもあるのです。
だから、今見ても、ルークの魅力は
色褪せていません。
刑務所の設定には、
少し非現実的な要素もありますが、
神から離れ、知性と理性に生きる私たちに
示された “現代の寓話” としても
この作品は、輝き続けていると思います。
“無冠の帝王” の当たり役
この『暴力脱獄』の魅力を知るには、
実際に映画を観ていただくのが一番
ですが、最後に少し余談を。
米アカデミー賞において
「無冠の帝王」と異名された
稀代のスターであるポール・ニューマン。
『長く熱い夜』『ハスラー』『ハッド』で
大成功するも、彼だけアメリカの
アカデミー賞での受賞なし。
この『暴力脱獄』でも、ドラッグを
演じたジョージ・ケネディが助演男優賞を
受賞していますが、主演のポール・ニューマンは
受賞なし。本当に不思議。
ポール・ニューマンが2008年に亡くなられた際に
“Cool hand is Dead” と書いた新聞もあったと
いうほど、アメリカで愛され、ニューマン氏の
演じた中でも代表的なキャラクターであると
認知されているほどの作品なのに……不思議です。
「無冠の帝王」の異名を、確定させたのは
この作品だったと、どこかで読んだ記憶も
あるのですが……今回、その資料が見つからず。
ただ、それだけ高く評価され、愛されている
作品であることをお伝えして、筆を置きたいと
思います。
おススメです。
【作品メモ】
1967年、アメリカ。酔ってパーキング・メーターを壊し、2年の懲役刑を受けたルーク。いつでも不敵に笑いながら意志を貫き通す彼は、囚人仲間から”クール・ハンド・ルーク”と呼ばれ、人望を集めていく。だが同時に看守たちから目をつけられた彼は、半殺しの目に遭いながら幾度となく脱獄を繰り返す。社会派監督スチュアート・ローゼンバーグのリアリスティックな演出が光る傑作。賭けで50個のゆで卵を食べるシーンや、母の死を悲しみバンジョーをつまびく姿など、演じるポール・ニューマンの魅力が最大限に引き出されている。ルークの魅力に引かれていく刑務所仲間を好演したジョージ・ケネディは、アカデミー賞助演男優賞を受賞。(アマゾンの商品説明より)
刑務所長が放ったセリフ「ここにいるのは言葉のわからん男だ」(原文:What we’ve got here is…failure to communicate.)はアメリカでは非常に有名なセリフであり、2005年にはアメリカ映画協会による「名台詞ベスト100」の第11位に選出されている。
【監督】スチュアート・ローゼンバーグ
【製作】ゴードン・キャロル
【脚本】ドン・ピアーズ:フランク・R・ピアソン
【キャスト】ルーク・ジャクソン/ポール・ニューマン:ドラッグ/ジョージ・ケネディ:ゴッドフリー/モーガン・ウッドワード:レッド/J・D・キャノン:ココ/ルー・アントニオ:ラウドマウス/ロバート・ドライヴァス:刑務所所長/ストローザー・マーティン ほか
本編:126分
■笑談快縁(株式会社プラップル)
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