私、ホラー映画とか大の苦手でして、ほとんど見ません。
そんな私が唯一コレクションしているホラー映画が、
この『エクソシスト ディレクターズ・カット版』。
オリジナル劇場公開版と2枚セットになったBlu-rayです。
「メリーランド悪魔憑依事件」という実話をベースに
した、悪魔憑きの話です。
ワシントン近郊の町に住む少女・リーガンに憑りついた
悪魔と、デミアン・カラス神父が対峙する物語です。
子どもの頃、TVでちょっとだけ見て
もう怖くて怖くてたまらなくて、
中学生の頃に池袋で開催されたVFX展に展示されていた
『首の回るリーガン』の人形も、怖くて目をそらした
思い出があります。
それなのに、なぜか気になる『エクソシスト』。
だって私、子どもの頃にカソリックの信者として教育を
受けましたから。
大体「カトリック」と表記されますが、
私の周りは当時から「カソリック」と言っていました
ので、自分の体験を優先して、ここでは「カソリック」
と表記しておきます。
そんなわけで、どうしても「悪魔」が気になるので
レンタルしてきて、ちゃんと見直してみると…
おや? と。
実はそれほど怖くない…?
しかも、面白い。
すごく面白い。
怖くなくなったことで、冷静に、映画としての
出来の良さがわかるようになりました。
その勢いで、
『エクソシスト2』(1977年)
『エクソシスト3』(1990年)
まで見ちゃいました。
『2』はダメ映画で見る価値ありませんが、
『3』は原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティが
自らメガホンを取った“正統的続編” であって、
非常に良く出来ていて大好きでした。
2~3回レンタルし直して観た記憶があります。
そして、エクソシストに対する印象が決定的に
変わったのが、2000年に公開された
『~ ディレクターズ・カット版』を見た時でした。
オリジナル版ではカットされていた映像が約10分
追加されたこのニューバージョンでは、
悪魔に憑りつかれた少女・リーガンが
ブリッヂのようにのけ反りながら歩く
“スパイダーウォーク”で階段を降りるシーンが
一番目立つ変更点であったと思います。
そのほかにもショックシーンが追加されていたと
思いますが、このバージョンの方が怖くなくて、
より冷静に見れたんですよね。
……ここまで読んで、「怖くないなら、面白くない
じゃん」と思われた方! それは早とちりです。
これは、キリスト教信者の心の闇の物語
なぜ、私がこの映画を「怖くない」というのか?
それは、この映画で緻密に描かれる
エクソシスト=“悪魔祓い” が、
キリスト教(カソリック)信者限定だからです。
私が怖かったのは無差別に襲ってくる悪意であり、
誰が犠牲になるかも分からない残虐な悪魔の存在
でした。
しかし、その認識が「違うな」と気付いたのです。
そもそも、悪魔とは何か?
これは、幼少期からの疑問でした。
神の教えを悟ろうとして断食するイエス様に
悪魔が語り掛け、
「このパンが欲しいか?」
というと、
「人はパンのみにて生きるにあらず」と
返す、有名な逸話。
これを教会にあった絵本で読んだ時から、
「悪魔」という存在が不思議でした。
イエス様が実在していた以上、
悪魔も実在するはずだからです。
悪魔は、この世に存在する。
けれど、イエス様にパンを勧める悪魔とは、
「心の弱さを克服する試練」ではあっても、
「イエスの命を狙う凶悪な存在」ではありません。
この辺は、ウィレム・デフォーがイエス様を
演じた『最後の誘惑』(1988年)を観ていただくと
分かりやすいと思います。
そう考えると、映画で描かれている
悪魔憑きの様子は、
どうも「悪魔の仕業ではない」
と思えるようになってきたのです。
あくまでも、人間の心が生み出した現象で
あると思い至るようになりました。
エクソシストを行う神父(祓魔師)は、
カソリック教会の下級叙階の位階の一つであり、
実際に悪魔祓いを行う際にはバチカンの許可が
必要であったようですが、
エクソシスト=カソリックの神父である時点で
宗教的な儀式に過ぎないことが分かります。
先日見た『死霊館』(2013年)では、
教会に通っておらず、洗礼を受けていない
一家(しかもプロテスタント)が、
“悪魔を信仰して死んだ”悪霊の被害に遭います
が、しかしキリスト教を信じている人たちで
あることに変わりはありません。
この『死霊館』のモデルになった家族も
霊能者(研究者?)も映画製作時に存命で、
当時を振り返ったコメントも収録されています
ので、「何もなかった」ということはないで
しょうが、それでもやっぱり
“キリスト教” の影響下にある人間心理が
引き起した現象であろうことが見て取れます。
そもそも、悪魔って何?
今、私たちが漫画や映画で目にする
悪魔のイメージは、イエス・キリストの時代には
存在しなかったイメージです。
キリスト教は、イエス・キリストの死後、
政治と結びつくことで、血生臭い歴史を
歩んできました。
イエズス会の宣教師による布教活動も、
政治と無縁ではありません。
世界中を武で圧して血を流し、政治と共に
信仰を広げていく中で、土着の信仰を吸収したり
排斥したりして、“禍々しい魔女” や
“残虐極まりない悪魔” の姿を創造してきました。
映画『エクソシスト』に見事に描かれている
悪魔祓いは、キリスト教信者の鬱屈した心の
表れだと理解しています。
そもそも、毎週教会に通い、教会学校で習う中で
悪魔の恐ろしさなんてものを聞かされたことは
ありません。
よくあるファンタジー・マンガとは違います。
今、私たちが知る悪魔は、人間が描いたものであり
それは、人間の心の内を表したものであると
言い切っていいと思います。
ここで、あまり詳しいことを書き始めると
キリがないので止めますが、
何というか、この『エクソシスト』という映画は
キリスト教について考え直す、いいきっかけに
なった作品でした。
もちろん、ホラー映画として超一級品です。
おススメです。
うちの子どもたちに見せたら、夜、トイレに
行けなくなることは確実なので、見せません。
しかし、ホラー慣れした大人の皆さまには
“怖さ” を楽しむ、その向こう側に広がる
“キリスト教の世界” に想いを馳せて、
考察を楽しむことを、おススメします。
この映画は、ある意味
“信仰心の結晶” なのです。
※残念ながら原作小説は現在「絶版」のようです。
【作品メモ】
1973年、2000年・アメリカ。1973年の公開時、アメリカで興行収入1位を記録する大ヒット。第46回アカデミー賞の脚色賞と音楽賞を受賞した。
14歳の少年が悪魔に憑りつかれたとする「メリーランド悪魔憑依事件」をモデルにしたウィリアム・ピーター・ブラッティの小説が原作。ただし、「メリーランド悪魔憑依事件」の少年は、後日「いたずらであった」と告白している。
【監督】ウィリアム・フリードキン
【原作・脚本・制作】ウィリアム・ピーター・ブラッティ
【製作総指揮】ノエル・マーシャル
【音楽】マイク・オールドフィールド:ジャック・ニッチェ
【撮影】オーウェン・ロイズマン
【キャスト】リーガン・マクニール/リンダ・ブレア:クリス・マクニール/エレン・バースティン:デミアン・カラス神父/ジェイソン・ミラー:ランカスター・メリン神父/マックス・フォン・シドー:キンダーマン警部/リー・J・コッブ:ジョセフ・“ジョー”・ダイアー神父/ウィリアム・オマリー ほか
本編:オリジナル版 122分、ディレクターズ・カット版 132分
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