ようやく、チャールズ・チャップリンの作品につい
て書くことにします。
私たちの世代にとっては、テレビで何度も放送され
ていた、いわば、映画の基礎知識……
というか、映画の代名詞。
世界に愛された喜劇人であり、
鋭くも温かい目線を持った社会風刺を含んだ作品で
愛された、類まれな才人です。
ナチス政権のドイツとアメリカが開戦前に、
ホロコーストの非道が明らかになる前に
ヒトラーを正面から攻撃し、
さらには戦争という行為そのものを、
戦火の最中に批判する作品を構想し、
アメリカ政府に危険視されながらも、
それぞれ力強いメッセージを世界に発信した
偉大なる言論人です。
しかし、若い人には「見たことがない」という人
も多いでしょう。
ヒトラーを風刺した『独裁者』の有名な演説を
引用した転職サイトのTV-CMを目にした人は多く
とも、『独裁者』をきちんと見た人は少ないで
しょう。それじゃぁもったいないので、ぜひ観
ていただきたい。
そんな、チャップリンの作品を、どれから紹介
しようか迷ったのですが、
まずは『ライムライト』から。
チャップリン63歳。映画人生の集大成
『ライムライト』は、チャップリン晩年の
傑作です。
初期の短編作品から『キッド』『黄金狂時代』
といったサイレントの傑作喜劇を連発してきた
チャップリンは、時代が、“サイレント(無声
映画)” から“トーキー(発生映画)”へと変化
していく中、抜群のパントマイムで表現する
サイレントにこだわり、『街の灯』『モダン・
タイムス』という、新たな傑作を世界中で
大ヒットさせます。
しかし『独裁者』からトーキーに転じた
チャップリンは非常に雄弁に、長ゼリフを
語るようになりました。
続く『殺人狂時代』でも、主人公のスピー
チで戦争批判が行われています。
多弁になったチャップリン。
理屈が多くなったチャップリン。
この『ライムライト』では、そんな自らをも
風刺してみませす。
社会に向けた堂々たる演説は控えて、
小さな幸せをかみしめるような名セリフ。
歌、踊り、パントマイム。
芸人・チャップリンの全てを見せるパフォーマンス。
チャップリンの、長く、栄光に満ちた映画人生の、
その魅力の大半が、この『ライムライト』に
込められているのです。
希望と悲哀に満ちた、優しい “愛” の物語
『ライムライト』は、かつて一世を風靡した老境の
喜劇俳優カルヴェロ(チャップリン)が、
バレリーナ志望の若い娘・テリー(クレア・ブ
ルーム)を自殺から救うところから始まる、
愛の物語です。
カルベロは、老人。恋というほど、浮つくことは
ありません。
才能はあれど、時代の変化や老いに逆らえない芸人。
才能はあれど、時代に見いだされない芸術家の苦悩。
表現者の悲哀と、希望を捨てない人生が、
何度観ても胸に迫ります。
タイトルの『ライムライト』というのは、
電球が発明される前に、舞台照明などに使われてい
た器具のこと。石灰灯などと言います。
つまり、古き時代の「舞台」を象徴しています。
映画のクレジット・タイトルに次いで↓下↓の文章が
現れます。
ライムライトの魔力――年老いた者は若者が現れたときそこから退かねばならない
この映画を観る準備として、知るべきあらすじは、
これで十分だと思います。
下の写真は、1980何年だったか忘れましたが、
『チャップリン・フォーエバー』と題して
リバイバル上映された時の『ライムライト』の
パンフレットの中面にある写真と文章です。
ちょっと雰囲気伝わるでしょ?
心優しい名台詞の数々と、ライバルとの共演
この作品を忘れ難いものにしている要因が2つあります。
1つは、数々の名セリフ。
上記のパンフレットから、2つ引用します。
「人生を恐れてはいけない。大切なのは生命だ。命だ。
地球が木々を育てるように、宇宙が命を躍動させる。星にできることはただ自分の軸にじっとしていることだけだ。
太陽はどうだ、2億8千マイルもの焔を吹き上げてエネルギーを消費しても、太陽は考えるかい?
意識はあるかい?
意識はありはしない、
人生に必要なものは勇気、それに創造力と少しのお金、
それだけだ」
「人生は願望だ、意味なんかどう言っても中身が変わるわけじゃない。バラはバラらしく花を咲かせ、岩は岩であり続けたいとしているんだ。木はこうだ。パンジーはこうして……」
素敵なセリフですよね。
そして、同時代の喜劇人として、人気を分け合った
バスター・キートンとの共演!
若い人に分かりやすく、日本のテレビで例えると
とんねるずとダウンタウンが共演するようなこと。
もっと言えば、浅田真央とキム・ヨナがペアで
フィギュアスケートをするようなこと。
これはもう、映像で確認していただくほかありませんが
とても素敵なプレゼントです。
おススメです。
【作品メモ】
1952年、アメリカ(しかし完成後、ロンドンで行われたプレミア試写会に家族と共に渡英したチャップリンは、赤狩りという、反共産主義の狂気によってそのままアメリカへの再入国を拒否される)。
≪あらすじ≫
1914年、夏の夕暮れ。ロンドンの下町のフラット。軽演劇ミュージック・ホールのかつての人気者で今は落ちぶれた老芸人のカルヴェロ(チャップリン)は、ガス自殺を図ったバレリーナ、テリー(クレア・ブルーム)を助ける。
テリーは、自分にバレエを習わせるために姉が街娼をしているのを見て、その苦い思い出のために足が動かなくなっていた。カルヴェロはテリーを舞台に戻そうと懸命に励ます。
そんなある日、カルヴェロが久しぶりの舞台でさんざん失敗をした後、「自分はもう終わりだ」と呟くのを叱咤して、テリーは思わず立ち上がる……(Blu-ray同封のブックレットより抜粋引用)
【原作・脚本・監督】チャールズ・チャップリン
【製作】ロニー・ドーサ
【撮影】カール・ストラッス
【美術】ユージン・ローリー
【編曲協力】レイ・ラッシュ
【キャスト】カルヴェロ/チャールズ・チャップリン:テリー/クレア・ブルーム:若い作曲家/シドニー・チャップリン:近眼のピアニスト/バスター・キートン:道化の警察官/チャールズ・チャップリン・ジュニア:バレエ特別出演/アンドレ・エグレフスキー、メリッサ・ヘイドン ほか
本編:138分
■笑談快縁(株式会社プラップル)
https://www.plapple.jp/top/personalbranding
■笑談快縁 無料相談会(Peatixへリンク)
https://peatix.com/group/6943917
■株式会社プラップル コミュニケーション&発信力講座 (ストアカへリンク)
https://www.street-academy.com/steachers/161096?conversion_name=direct_message&tracking_code=e7f5655a68cb4fa90e6dc7f863fe0e49