こんばんは、株式会社プラップル
コピーライターの佐藤秀治です。
私自身が逆境にある時、必ずと言っていいほど
脳裏に甦ってくる映画のセリフがあります。
それが、『キッズ・リターン』(1996年)の
主人公たちの最後のセリフ。
「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな?」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」
この「まだ始まっちゃいねぇよ」という強がりを
自分の身にも重ねて、「まだ頑張ろう!」となる
わけです。
ボクサーとしての成功を自分で台無しにした少年と、ボクサーどころかヤクザにもなりきれなかった少年
この映画は、“北野武が出演していない”北野映画
であり、少年たちの「成功」と「挫折」を、淡々
とした筆致で、冷酷に切り取った青春映画です。
北野武が、バイク事故から復帰して初めて監督
した大傑作です。
主人公はマサル(金子賢)とシンジ(安藤政信)。
不良少年です。
マサルがリードして、シンジが優柔不断に従って
いく関係。
マサルはある日ボクシングを始めますが、結局は
続かない。
マサルの後を追ってボクシングを始めたシンジは
せっかく才能を見い出されたのに、意志の弱さゆ
えに挫折していきます。
そして訪れるラストシーン。
母校の校庭で、自転車を2人乗りするマサルとシ
ンジの会話が ↓ これなんです。
「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな?」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」
このセリフで終わることで、この作品は、まるで
無限ループするような魅力を発揮します。
要するに、また最初から観たくなっちゃうんです。
彼らのだらしない日常を見ながら、
「まだ始まっちゃいねぇよ」という言葉が、
脳内を駆け巡ります。
彼らのダメさ加減に自分を重ねながら、
「ああ、そうだよ。終わってないよ!」と、
思い直せるんです。
この無限ループが、この作品が、北野映画屈指の
人気作としている要因です。
実は、突き放したラストシーン。文化の違いで、見方は変わる。
私自身、このセリフに何度となく励まされてきまし
た。とてもいい言葉だと思います。
でも、このラストシーン……
実は非常に冷静に、北野監督が主人公2人を突き放
していることが感じ取れます。
それは、「まだ始まっちゃいねぇよ」というマサ
ルの態度と、声の調子の演出にあります。
これ、どこをどう見ても、
変わってないんですよね。
中途半端なマサルのまんま。
どうみても、挫折に学んで生まれ変わった感がな
いんです。
北野監督は、この映画公開直前に放送されたTBSテ
レビ「NEWS23」のインタビューに答えて、次のよ
うなコメントをしています。
外国に行くと、最後のシーン見て「悲しい映画だね」っていうから、「そうですか」って言うと、「だって、この二人終わっちゃってるじゃないか」って。ところが日本的な考え方でいくと「冗談じゃない、まだ終わってねぇ、始まってねぇ、行くんだ」ってえと拍手するんだよね。「そうだ、そのまま行けっ」ていうような。国民性の違いがありますよね。
北野 武 談(映画公開当時の「ニュース23」インタビュー映像より)
監督は、海外との文化の違いによる、ラストシー
ンの受け取り方の違いを語っているのですが、多
分、監督自身の演出意図がキレイに解釈されたこ
とが印象深くて、この場の発言に出てきたんじゃ
ないかと思います。
『キッズ・リターン』に描かれた少年たちの明暗
を分けているのは、下記の3つの要素です。
- 明確で強い意思を持っているかどうか
- 周囲に流されず自分を貫けるかどうか
- 魚が水を泳ぐように、当たり前に努力できるか
マサルとシンジが、この後「勝ち」に転じるか、
それとも「負け」を繰り返すのか……。
それは、彼らが「自分の信念」を貫き通せるか
どうかにかかっていると思います。
果たして彼らは、挫折から学んで、立ち直るこ
とができたのかどうか?
その判断は、観客に委ねられているのです。
そして、その判断には、観ている私たちの人生
が鏡のように反射しているのだと思います。
だから、この映画を何度でも観てしまうのです。
丁寧に積み重ねられた、印象的な映像。
久石譲の、インパクトの強いテーマ曲。
心に刺さって抜けないセリフ。
いつまでも色褪せない傑作です。
未見の方は、ぜひご覧ください。
おススメです。
【作品メモ】
1996年、日本。北野武 監督第6作目。第49回カンヌ国際映画祭監督週間正式出品作品。第6回東京スポーツ映画大賞・作品賞・監督賞。第51回毎日映画コンクール・日本映画優秀賞。第39回ブルーリボン賞・監督賞。第18回ヨコハマ映画祭・作品賞・助演男優賞(石橋凌)・最優秀新人賞(安藤政信)・撮影賞。第9回日刊スポーツ映画大賞・監督賞・新人賞(安藤政信)。第21回報知映画賞・新人賞(安藤政信)。第7回文化庁優秀映画作品賞・長編映画部門。第6回日本映画プロフェッショナル大賞・監督賞。第11回高崎映画祭・最優秀作品賞、最優秀新人男優賞(金子賢、安藤政信)。
第70回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第2位、ヨコハマ映画祭日本映画ベストテン第1位。
【監督・脚本・編集】北野武
【制作】森昌行:柘植靖司:吉田多喜男
【撮影】柳島克己
【編集】太田義則
【音楽】久石譲
【キャスト】マサル/金子賢:シンジ/安藤政信:ハヤシ/モロ師岡:ジムの会長/山谷初男:シゲさん/重久剛一:ヤクザの組長/石橋凌:若頭/寺島進:カズオ/津田寛治:南極五十五号(漫才コンビ)/北京ゲンジ:ヒロシが乗せたタクシーの客/大杉漣:担任教師/森本レオ ほか
本編:108分
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